え?
え……? は……???
い……イデア・シュラウドの地獄が……、思ったより数倍濃く深く逃げられない漆黒で。
ショックを受けてしまった。
この記事では、その……ツイステ6章中編2までの話を……します……。
※※ネタバレ注意※※
-アプリゲーム『TWISTED WANDERLAND』メンストーリー6章-50まで
-D映画『ヘラクレス』全編
※※※※※※※※※※※※※※
神の業を"人"に背負わせたのか?本当に?
イグニハイド寮のインスパイア元作品が『ヘラクレス』であることは周知の事実ではあるんだけれども。
その『ヘラクレス』のヴィランである、ハデス様のいた地獄ってさ。
「神って死なないから過労死もしないじゃんwウケるww」
という何一つ笑えないダークネスギャグをゼウス(上司)からぶつけられつつ他の皆が嫌がる仕事を延々押し付けられ続けるというエターナル・暗黒・労働環境じゃないですか……?
ハデス様は映画のヴィランであって主人公ではないので、心情を描くシーンは当然主人公より少なくて。
彼がヘラクレスを潰そうとし、オリンポスを支配しようとする動機を描いたシーンは、序盤のあの場面しかないんですね。
<ゼウス>
そんなに根をつめると死んでしまうぞ
ハッ! 神が過労死か!
おかしくて死にそうだ
━6-1
ないんですけど、あのたった一瞬で、
- 「神は死ぬことがない」
- 「ハデスは周囲から嫌われ馬鹿にされ、ストレスを感じ続けている」
- 「その屈辱は永遠に終わらない。何故なら神の世界は永遠だから」
という重すぎる地獄が詰まってるん……ですよね……
ヘラクレス視点で見ると、「邪魔してきて、ときに殺そうとしてくる敵」でしかないんですけど、、、
ハデス様の居た暗闇は、霊魂を管理する役割とか、場所としての「冥界」とかそういうのを超えた概念地獄、なんですよね……。
そんでツイステの6章冒頭にその……「神が過労死か!おかしくて死にそうだ」が挿入されたわけで。
だから……だから、覚悟はしていた筈なんだよな、、、シュラウド家が代々「仕事を遂行する能力がある」が故に、延々キツい家業を背負わされている、というところまでは。
でも、、
まさか、「オーバーブロットする心配ないから永遠に働き続けられるね!」なんて、そんな
そんな「死ぬことができないという神の身ならではの呪い」をそのまま人の身に被せてくるなんて思わなくて。
ショックを受けてしまった。本当に、、、
こんなん、人間が背負える業の限界点を超えてるじゃん
そりゃブロットが溜まらなくたって、肉体的に死ぬことはあるかもしれない。けど、本来なら「ブロットが溜まるから」という理由でセーブ出来てた魔法、それを使った働きを「できるから」という理由で延々強いることが出来てしまう。
特にシュラウド家を虐げる立場である『ジュピター家』にはそれができる。死ぬまで ずっと、こき使うことが出来る。
しかも、ブロットがない時は魔力を喰われるって???
何だ、その怖すぎる話は……。
魔力の尽きた状態?
ツイステの世界でいう魔力って、「単なる魔法を使うための力じゃないよ」、てのがしつこいほど強調されてきているから余計こわい。
心身を休めることによって溜まったブロットが消えて
魔力も体力も回復するって仕組みがそもそも
『魔力が生命力に直結する』という事実を示しているし
<イデア>
……で、最終的に魔法士の魔力が底をついたら……
苗床としての役目はおしまい。
<リドル>
な、苗床って……?
<イデア>
言葉のまんまだよ。
ジュースがカラになった瓶は、ゴミ箱へ。
術者本体は消滅し、欲望と負の感情にとらわれた怪物だけが残る。
━6-27
オーバーブロットした術者が「魔力」を失うと、体そのものが消滅するなんて言う。
ブロットの化身に身体を捨てられる、という理屈ならば、ブロットを焼却するシュラウドの呪いによって化身は生まれず、「魔力が尽きても体が残る」のかもしれないけど。
じゃあその「魔力が尽きて体が残った状態」ってのがなんのかってのを考えるとさ。
イデアの言葉を借りれば”最悪”、なんだと思う。
魔法はイマジネーション
本編では度々、『魔法=イマジネーション』だと語られています。
魔法の強さはイマジネーションの強さ。
魔法の効果をせい買うに思い描く力が強いほど
正確性も強さも増す。
━1-22
魔法 それはかつて奇跡と呼ばれた超自然エネルギー
イマジネーション その果てしない可能性
━6-26
さらに星送りの願い星は、『願い』を口にした人が放出する魔力に反応して光るという仮説もあるようでした。
人間の体温とか、微弱な魔力に反応して光だけって言われてるのに……
━星に願いを~Dance and Wishes~ ep.4
ただ望みを願うことによっても、魔力の放出、消費が発生するならば、つまりそれは「望む」という行為に魔力が必要であるということになる……なりますよね?
つまりは、魔力を失うということは、
「こうしたい」「これが望みだ」っていう感情そのものが尽きるということ
なのでは……?
故にブロットの化身に主体を奪われ捨てられて、消滅する。
魔力がつきると、抵抗もできない、意思薄弱な屍も同然な状態になる。「魔力が尽きた体」っていうのは、そういうことなんじゃないか?
……それは、精神の死でしょ……。
「一族のトップに立つ方法」に対策するんじゃなくて、
「一族のトップに立つ」という野望・願い・希望自体を奪う。
希望や願いが湧いた途端にそれ奪う 消し去る
イデアの言う通り、本当によくできた酷い呪いだと思います。
強さと苦しみ
それなのにシュラウドの一族は皆「こうすれば自由になれる」を探る為に研究し続けてきている。
幼少のイデアも「みんな同じ呪いになれば解決だ!」と状況を打破する思考を働かせ、解析を試みている。
すごい
すごくねえか、本当に。
どれだけ叶わないと突きつけられても、
こうならいいのに、それはこうしたら叶うのかも、じゃあ実際やってみるかって
願いを描くことができる
行動を起こせるんですよ。
イデアがネガティヴな言葉を紡ぐと同時に、常に創造的で新しいアイディアに溢れている理由がわかる気がします。
強いんだ。呪いに負けないほど、「願いを描く力が特別に強い」んだ……。
厳しい教育に負けずに、潰れずに完璧にこなそうとして、その優秀さ故に結果今までずっと「できてきてしまった」リドルと同じで。
どんな方法論を持とうとも「実現することを許されない」世界で、それでも「絶望することなく理論を考えてしまう」レオナと同じで
持たざる者としてどんな屈辱を受けようとも、自分が何かを得る未来を望み「努力し続けることができてしまう」アズールと同じで
幼い身で嘘をつき続け、無茶を押し付けられて不満を覚えようとも「完璧に誤魔化し続けられてしまった」ジャミルと同じで
誰よりも高みにいて、故に多くの他者に理解されずに抑圧を常に覚えながらも「進み続けることが出来ていた」ヴィルと同じで
終わらない。終わらないんですよ。
強いからこそ、優れているからこそ、苦しみに耐えることができてしまうからこそ。
苦しみが終わらない。逃れられない。
シュラウドでなければとっくに、その一族は呪いに生命力を奪われて一族ごと滅びていたかもしれない。
無闇な害意を選ばない知性
……これはとても後ろ向きな話ですけれども。シュラウド家の呪いというのは、自らが滅びれば、苦しみは終わるわけですよ。自分や自分の子孫の苦しみが、少なくとも終わる。幸せにはなれないけれども、終わる。
でもそうすると……世界がめちゃくちゃになるわけです。
「シュラウド家が役割を放棄した未来」に関して、イデアは「漫画の続きやがけものライブが見れなくなる」と言っています。ですがそれは「生きる上での楽しみを失う不安」を語っているのであって、シュラウド家が滅びること、自分が死ぬことは想定していません。
もし彼が、自分たちの滅びを想定するのなら……世界が混沌に堕ちようが、堕ちなかろうが、漫画の続きは読めません。だって死ぬんだから。その後のことなんて、何がなくなろうが同じ。だから彼が口にした「生きる楽しみが消える」という論だけを気にするのなら……耐えきれず爆発して、衝動的に自暴自棄になることだってできる、できてしまう立場にあります。
でもそういう”ヤケ”は起こさないんですよね。起こしてこなかった。先祖代々、ずっと。
ここにシュラウド家の鉄壁の理知を感じます。
僕も昔は「全人類に僕らと同じ呪いをかければ、全て解決だ!」とか考えて、
自分にかかった呪いの解析とかしてみたけど……
解析し始めて3分で気づいた。
(中略)
その段階で”呪い”が最悪なものだって普通はわかる。
……子どもの頃の拙者、察し悪すぎか?
━6-42
イデアのこれ↑も、かなり間接的で本人も意識してないからか判りづらいですけど、
つまりは
「世界中の人を勝手に最悪な呪いに巻き込むのはナシだ」
って言ってます よね?
「すべての人を同じ呪いにすれば解決だと思ったが」→「最悪な呪いだと解析してすぐにわかった」
不可能とは一言も言ってない。”最悪”と気づいた段階で研究をやめたようなニュアンスです。
彼は、地上に住む人々を指しては「能天気で羨ましい限り」と悪態をついていますけど、それでも「同じ苦しみを味わえ」と、引き摺り込むのは当然に選択肢から外してるんですよ。
おそらくそれを、優しさとも甘さとも思ってないんだと思うんですよね、彼は。
理性からくる、当然の帰結というか。そんなことしてもしょうがないでしょ、と。
ヴィルに「顔見知りだから特別扱いしてくれた」と言われた時も……相手に優しくしている自覚はなさそうでした。ただ「渡さないでおく」という選択肢を選ぶ意味がなかっただけという感じ。
なんというか、イデアは……
自らの選択肢の中から「無闇な害意」を見極めて捨てる聡明さを持っている気がします。
そもそもの態度が相手の気分を悪くしやすいですし、好きなものを愚弄されたと感じると刺々しい言葉を使うので、本当にわかりづらいんですが。
そもそも彼の能力って、いくらでも他人の弱みを握れて(ハッキングなんて楽勝だし)、得ようと思えばいくらでも得られる益がある、そういう「強い」ものなんですよね。しかし、イデアはそれをやらない。
イデアは誰の情報も自由に手に入る筈なのにマッスル紅の正体も知らないし、学園の誰がどんな趣味をもつかも「イメージ」だけで語っていてよく知らなかったりする。
本人としては「知る必要がない」という理由かもしれない。けれど原始的な心理として、必要がなくとも「してはいけないができること」をやってみたくなる、というのはどうしようもなく有ります(カリギュラ効果)。映画『ヘラクレス』のモチーフ元であるギリシャ神話にも、見てはいけないものを見てしまうパンドラの物語がありますからね。そうしたことを考えると……
「できる」のに、"そういう方向に食指が動かない"というだけで、イデアの生来の誠実さを感じざるを得ない、と言いますか。
理発なんだなと、思います。
オルトのため、みたいな、自分にとって重要なことと結びつかない限り、無闇に侵害したり収奪したりしない。
世界をめちゃくちゃにできるのに、しない とか
すべての人を最悪の呪いに巻き込むことができるのに、しない とか
プライバシーを覗くことができるのに、しない とか……
それはもしかしたら親や先祖から受け継がれてきた理知のカケラなのかもしれません。
彼の、心の奥底の「人としての賢さ」が……彼の「並外れた力」から、周囲の人々を守っている。
なんというか……そういうところがやはり、ネモ艦長に似ているなって思いますね……。
(ネモ艦長:ディズニー実写映画『海底2万マイル』の登場人物)
延々続く苦しみに侵されて、自分の魂の大事な部分を犠牲にしながら、同時に確かに、理性と情が砦となっている人、という意味で。
イデアはネモ艦長成分が絶対入っているという話
ネモ艦長というのは、とても頑なに絶望を持ち、だけど本当は希望を隠している、端から見てとてももどかしい人物で。だから周囲が、身近な人物が……「彼」と「彼の理想」の為に、『強く支えよう!』と心を燃やしてしまう。そういうタイプのカリスマ、なんですけど。
イデアにネモ艦長の成分が入っていると解釈するのなら、きっとオルトは、もどかしいのだろうな。兄さんは幸せを得るべき、光を浴びるべきだと思うのだろうな。
どうしても、彼を光の下に連れ出したいのだろうな……。
ポムフィオーレの熱い毒
シュラウド家は、やろうと思えば簡単に世界を混沌に堕とせる。
でも、それをしてこなかった。
そうやって、己の理知に従って「できるけど、しない」を選んできた魂には……。ポムフィオーレの「やれるだけはやった、と言う為」とか「0を0のままにしない」という、感情にまっすぐすぎる猛進の言葉は
"""毒"""
になってしまうんだよな……。
ヴィルもルークも 何も悪くないし、彼らにとってその言葉は紛れもなく正しいんだと思うけど、いや正しいからこそ。真っ直ぐで、合理と強さがあるからこそ。
合理だけが習熟して、感情の幼いオルトには……刺激的すぎる。
魅力的で
素晴らしくて
つかむべき光に見えるんだろうな……。
ハデス様もさ、己の苦しみから逃れるために、「どうにか」したかったんだよな。敗北が決まっていても、それが運命に定められようとも、女神たちを宥めすかして、それすら変えようとして
そりゃ、「ゼウスを倒し、ヘラクレスを殺そうと企てた」のだから。結果としてヘラクレスやゼウスにねじ伏せられるのは、自らに返ってきた因果と言えるけど。
ヘラクレスが村で居場所がなくて「ここは自分の居場所じゃない」って思ったように
自分の居場所を”どこか”に探して、オリンポスを目指したように
ただハデス様もオリンポスを目指しただけなんですよ。
みんなそう。『ヘラクレス』の登場人物が抱えてる問題は、「自由」と「居場所」をどう定義し、どう得るか、ということに収束している。
それに関してはメグ(ヒロイン)も、ヘラクレス(主人公)も、ハデス様(ヴィラン)も一緒なんですよね。
6-38原典挿入シーンでも、監督生が「それは本当の自由なの?」とか言い始めてもう辛い。
<ハデス>
ワンダーボーイの弱みを探ってきてくれよ
ご褒美はすごいぞ…お前がのどから手が出るくらいに欲しがってるものだ
そうさ自由だ
→ それは、本当の自由なの?
━6-38
そう そうね 挿入シーンのメグは、ヘラクレスの弱みを探りたいと思っていない。
確かに、ハデスは契約さえすればそれを守るし、実際メグは約束どおり、ハデスの元から解放されるのかもしれない。
けれど、「枷から解き放たれること」を条件に己が望まないことをするのは……。
それで「自由」を得られたとは、言い難い。そう思います……。
「その人が本当に何を望んでいるか」こそが、自由に結びついているはずだから。
ポムフィオーレの美しく熱い毒を飲み下したオルトには、見えているのかな、目指すべき”自由”が。
見えてきたって、言ってたけどな……。
待つしかない。
ああ あ〜……もう。
何がやばいって
まだオバブロ後の白黒過去回想が来てないことですよ。
なんっ……
これ以上なにがくるん!?!?
こわ い
こわいですけど、でも、映画『ヘラクレス』のメグやヘラクレスが辿り着いた「自由」と「居場所」の答えを、見つけられるという気もするんだ、イデアなら……。
ハデス様とネモ艦長って、イデアがいなければ並べて考えることもなかったと思うくらいには、「内面の仕組みが別物の人物同士」だと思うんですけど。共通点といったら、暗い場所に住んでいて陰鬱な空気があるくらい。ハデスは冥界が好きじゃありませんが、ネモ艦長は自分の住んでいる場所が大好きですしね。正反対の部分が結構ある。イデアが……その2人の影を宿していると考えると、なんだか希望が生成される感触があるんですよ。
ハデス様の破滅の遠因となった弱点を補うように、ネモ艦長の長所がイデアに備わっていて。
ネモ艦長のもどかしさ、「足りなかった部分」に、ハデス様のエネルギーが燃え盛っている感じというか。
(どちらのキャラクターも知っている人なら、わかって頂けるかなと思うんですが。ネタバレも含んでしまうので、そのあたりの説明をするとしたら、別記事で……)
そりゃ、継承しているとしたら、短所もそうだと思いますけど。
心配はいろんな人がしていると思うのでね、ここでは程々にして置いておきます。
何より彼は、生きたがっているから。
ハデス様のように「神の身故に死ぬことがない」と決まっているわけでもないのに、なんでか死ぬ気は全然ないじゃないですか。
漫画読みたいからでも、アイドルのライブ行きたいからでも、彼が生きたがっている限り「終わり」じゃない気がします。
「役目を放棄する」という想定でも生きる未来しか見てないような男なら……そういう願いを描きつづけられるなら、「生きながら、解放される方法」を、創造できる気がする。
彼は、クリエイターなので……。
ないものをつくるのは、得意じゃないですか……?
このどうしようもない、逃げ場もなく絶望も停止も許されない地獄で
自分が死ぬことを少しも想定しない彼の「生への意思」と
最悪の呪いを全人類にかけることを選ばなかった、彼の”聡明さ”が
光を掴むのを待つ 光を創り出すのを待つ
待つしかないんだ、オレたちは……