敢えて言いましょう。「ロナルドは、一夜でドラルクに狂わされたのだ」と。
※この記事は週刊少年チャンピオンで連載中の漫画『吸血鬼すぐ死ぬ』(著:盆ノ木至)の考察記事であり当該作のネタバレを多分に含みます。
※最新コミックスまでの内容の他、原作者・公式アカウントツイッターで過去発信された情報に触れる可能性があります。ご注意ください。
もくじはコチラ
ロナルドは、「ドラルクに対しては意地っぱり」であるらしい。
【ロナルド】ドラルクに対しては意地っぱりの退治人。突然、家に入ってきたオッサン相手に当然ちゃ当然。
━『吸血鬼すぐ死ぬ 12』140死柱情報,p.160
「突然、家に入ってきたオッサン相手」だから……。まあ確かに。
急に家に入ってきた不審者に無条件に心を許したら、それこそどうかしているでしょう。
だけれども。
よく考えるとこの理屈、気になる点があります。
確かにロナルドは、他の誰かに対してと比べ、ドラルクに対して当たりが強いのですが……
それって1死の最初からそうだった気がするんですよ。
しかしドラルクが「突然、家に入ってきた」のは2死。
このズレはどう考えたらいいのでしょうか?
というかそもそもロナルド、自分が1死で「突然、家に入ってきた男」だったではないですか。
どうも1死のロナルドって、2死以降とシームレスに繋がっているようなのに、何だか謎なのです。
「意地っぱり」は本当に「突然、家に入ってきたオッサン相手」だから、というだけで生じたものなんでしょうか?
根本の話、意地ってなんの意地なの?
「突然、家に入ってきたオッサン」だったらドラルクではなくても今のように「意地っぱり」なっていたのでしょうか?
……という話を、
関連マシュマロにお返事しつつ話していきます。
マシュマロ本文
いつも楽しく考察拝見させていただいております。オーブンいつ買ったか問題が一番大好きなのですが、なんかほんと94のふたりはよくわからない、よくわからないけど現実として積み重ねている行動が愛に基づいてるだろそれは…なので、視聴者はぐちゃぐちゃになっちまう…。その解像度がお陰様で爆上がりしており本当に楽しませていただいております。
先日久しぶりに一話を視聴したのですが、一話のロナルドくんほんとに対吸血鬼への倫理観バグってないか…?と思い、もし気が向きましたらざらめさんはその辺りどうお考えでしょうか、聞いてみたいです。
途中から意識の変革があったんだろうなぁとは随所で思います。ドラちゃんが人間という生命体や「ロナルドくん」に対して興味を持ち、理解を深めていくのと同様に、ロナルドくんも吸血鬼という生命体への向き合い方が変化したんだろうけど、いかんせんドラちゃん相手は素直じゃないしギャグ以外のパートは隠れてしまうので変遷がわかりにくいな、と感じます。
初期の初期から特選牛乳贈ったりニンニクを隠してくれるのは優しさだとは思いますが、そうすると余計に一話の、冤罪を訴えても聞く耳を持たず、住居に侵入しておいて居丈高だったあのロナルドくんは何だったんだろう…と思います。ギャグだし一話だからといえばそれまでなのですが、連載が続き世界の解像度があがるほど、初期ルドくんが持ち得た敵意が破滅的で。
一方的な情報で罪のないものを襲い家屋を損壊させた(その過程に命のやり取りがあったしバカ対抗戦になったので無効ですが)、という側面だけ見れば、相手がドラちゃんでなければ(クソしくんやにくみさんのように力があれど一般市民の吸血鬼が、実態が知られずに噂だけで乗り込まれたとしたら)、それこそ「ロナルド様」も退治人生命もあの夜で終わったのかなとも感じます。ふたり、本当に関係性と相互作用のバランスが絶妙で、魅力的だと思います。
長々と失礼しました。
マロありがとうございます。お役に立てているようで嬉しいです!
オーブンいつ買ったか問題、私も気に入っております
未読の方は是非、お暇な時に
zara.hateblo.jp
で、本題ですが……ロナルドの初期(特に1死)の振る舞いを、現時点とのギャップを含めてどう捉えていくか、という話ですね。話題提供ありがとうございます。
なんかこう……「ドラルク以外だったらこうはならなかった」とか「主人公2人の相互バランスが絶妙」とかメッチャワカルの部分と、ココ逆ナンダァ~の部分が有って興味深く読ませていただきました。
逆というのはアレ、私は1死に関して何方かというと「ドラルクの方が第三者目線で不利」かなと思っているってことです。第三者というのは、吸死世界に住んでいる第三者のことです。
この考えはアニメ1期再配信時の盆ノ木先生の実況ツイートから来ていまして。
これですね。
ツイート初めて見た時は「?」って思っていました。
というのも当初、
城崩壊のことは「事故」であって、どっちが悪いという考えは持っていなかったので。でもそう言われて改めて整理してみると確かに、
ロナルドは城の崩壊に直接関与はしていなくって……。
逆に
「ドラルクがやったこと」が次々連鎖反応して結果、城爆発の事故まで至ってるんですよね。
「毒ガス」のスイッチを踏んだのはドラルク。メビヤツ群もドラルクが出したもの。そのどちらも、子供やロナルドを
殺す道具、凶器で。そういう機能を持っているのを知りつつ罠へ誘導したり、ビームを発射したりしていたのは、やっぱりドラルク。
つまりドラルクが「(子供と)退治人に
凶器を使わなければ」、城は爆発しなかったことになります。
人に向けて銃の引き金を引かなければ暴発して怪我することも無かったのに、みたいな話ですね。
最終的には事故なんですけれども。順番に原因を追っていくと、確かに「どっちも悪くない」と言うには若干
ドラルクの関与が強すぎるな……と。先生の言う「城はドラルクが悪い」はそんな感じで腑に落ちました。
……腑に落ちたのですが……。
でも、そこで納得した割には私って、先生のツイートを見るまでは
「事故」と思っていたわけじゃないですか。
つまり、「城崩壊」について、なんかわかんないけど
ドラルクの責任を軽めに見積もってしまっていた。
何でそんなことが起きたのかというと、やっぱりそう……
「ロナルドの態度が
なんか唐突に怖かった」。これです。
城の
扉を勝手に開けて入ったロナルド。
武器を出して「誘拐犯」として
いきなり尋問したロナルド。
理不尽に威圧的だったロナルド。
マロ主さんの解釈の中にも入っていましたけれども。
まずここが、「なんのつもりでそんなことしたの?」ってことなんですよ、問題は。
ドラルクのやらかしはやらかしで、殺人未遂とか含んでいて普通にヤバイのですけれども。そのやらかしが始まる前に、
ロナルド側からやったこと。
ここでドラルクが「可哀想」に見える土壌できちゃっているし……
理由なくやっていたならロナルドくん貴様、それはそれで狂っとるぞ。と。
で、考えました。
態度怖かった理由。
あります。ちゃんとあります。
ただ結局、
狂ってはいた。
いや、「
狂っていないと駄目」だった。
ロナルドは、むしろ退治人として……
「狂い」を認識しながら、
真面目に全力で狂ってたんです。
共有
説明に入る前に、とりあえず前提を共有しましょう。
私はアニメは原作と別世界線と思っているので、つい最近の原作の話を一緒にするためにも原作漫画のほうの第一話(1死)に関して話します。
話の内容で「?」と思ったら原作とアニメの違いですれ違っている場合もあるかもしれません。
あと、目次から狙った章だけ読みたい方はこちらからどうぞ→『もくじ』
勝手に家に入ってきた男
では。
まず序盤のロナルドがもう狂ってたよね、って話なんですが……。
想像してみましょう。
自宅の扉をいきなり開けて入ってきた男が、「出てこい〇〇(家主の名前)!!」って大声出して、いざこっちが出て行って本人確認したら武器を突きつけて「とっととさらったガキを出せ!」ですよ。
怖すぎるやろがい。
通報した。
私がムキムキマッチョメンだったら組み伏せて縄で縛ってから通報したかったかもしれない。
にく美さんだったら多少ギョルルル🌀ってやりそうですよね。そんで、通報もする。
家主視点、完全にロナルドは不審者だし恐怖の対象です。
通報する精神的余裕がなかったら、縮こまって退治人に従うしかないんじゃないでしょうか……。
質問されれば答えるしかない、調べさせろと言われたら部屋に通すしかない。
で。
これって、ロナルドさん自身……分かってないわけないんじゃないかな?と。
相手が無辜の市民なら……勝手に家入られて、体格の良い成人男性に銃を持って迫られたら、まあ通報するだろうなって事は。
怖いし、助けてだし、倒せたり追い出せたとして放置して良いもんとも思えない。
【ロナルド】ドラルクに対しては意地っぱりの退治人。突然、家に入ってきたオッサン相手に当然ちゃ当然。
━『吸血鬼すぐ死ぬ 12』140死柱情報,p.160
当人も「突然、家に入ってきたオッサン」にめちゃめちゃ反発を覚える感性です。「勝手に家に入る」が「おかしい」のは、知っている。
ロナルドは退治人だから「勝手に入ってきた吸血鬼」には自分で対処しないといけないんですけど……。
市民相手に、「勝手に家に入ってきて武器持ってガン飛ばしてる男」は通報されてもしょうがない。
でもなんだかロナルドは……それを全く心配してないように見える。
相手がもし「何の罪もない市民だったら」……という可能性を。リスクを。
『どういう人物だかわからない』のに。
すごく勢いよくバアン!て扉開けて。口元には笑みですよ。
強気に尋問するのも予定通りって風ですし……。
不思議です。
同話で「炎上が一番おっかない」と言っているロナルドが、「どういう人物だかわからない」という状態で、どうしてそんなに迷いなく進めたのか……。矛盾に思える。
1死だけ読んでいると全然わかりません。
じゃあわかった。
ならば、こういう時は、アレ。
1死だけ読んでわからないなら、1死以外も参考にすればいいじゃない。
なんか怖かった対比
ちょうど良いのがあるんですよ。
1死と同じで、「唐突にロナルドの態度がなんか怖かった」パターンが……しかも数話も経たない内に。
3死、ハナコの本心を引き出した時のことです。
<ハナコ>
あら撃つ気?
いいの?この男に当たるわよ
怪我でもさせたら大変よ~?
えっ ちょ ホントに撃つ気!?
止めなさいよ 見えないの!?
コイツに当たるって!!
やだ!!止めてよ
ダメよ撃ったら
駄目…
━『吸血鬼すぐ死ぬ 1』3死,p.55
依頼人の青年に「一滴残らず吸血して捨ててやる!」と叫んだハナコ(吸血スラミドロ)に、ロナルドは銃口を向けました。青年はハナコの体内に囚われた状態。ハナコを撃てば青年に当たるかもしれない……。それを盾にハナコが脅すような言動をとっても、ロナルドは少しも表情を動かしませんでした。
そして、そのまま冷静に発砲したのです。結局は空砲でしたが……
あのロナルド、今にも人を撃ちそうで、「怖かった」ですよね?
少なくともハナコは怖かったと思います。本当に青年を撃ってしまうと思った。
だから、ハナコは青年を自分の背後に放り、庇ったんです。
その行動をもって、「人を害する危険な吸血鬼ではない」と判断ができたため、退治人ロナルドはハナコの退治を中止したのでした。
ハイハイ!
ということは、ですよ。
これはよく考えると、「相手が危険な吸血鬼かどうか」を判断確定する前にロナルドは「怖い態度」で「今にも攻撃しそうな素振り」を見せたってことになります。
……これって、1死でドラルクに対してやってたことと同じじゃないでしょうか?
市民の身柄が相手の手にあって(誘拐/人質)、それでも強気に攻撃のポーズをする退治人。
というシチュエーション。
「今にもお前を退治するぞ!」という態度で、武器を出して、脅して……。
けれど実際問題、ロナルドから見て「目の前の吸血鬼の危険性」は確定していなかった。
うん……。
そもそも「一滴残らず吸血して捨ててやる!」と言い放ったハナコに対して「本気じゃなかったから大丈夫だ」って判断できるロナルドなんですもんね、3死の結末って。
すごく寛容で柔軟です。
市民と一緒に吸血鬼を帰宅させたりもした。
そんなロナルドが、ドラルクに対しては無根拠に問い詰めて退治するなんて妙ですもんね。
1死でも3死でも、「敢えて理不尽に振る舞っていた」って方が、退治人としての方針に一貫性があります。
これは……1死で見えなかった「ロナルドの退治人としての仕事ぶり」が3死で補足的に描かれたってことになるでしょうか。
もしもそうならば、1死で「敢えて敵という設定で攻撃ポーズをとった目的」も……3死と同じ。
「自分を恐れさせる」ことで、対象の危険性を判断する為、でしょう。
「危険人物」っていいな♪
ハナコは瞬間的に恐れました。
ロナルドが「常識が通じないヤベー奴」に見えていたからです。
怪我でもさせたら大変よ~?
━『吸血鬼すぐ死ぬ 1』3死,p.55
ハナコの脅しは「退治人は人間を害したら不味いはずだ!」という予想が前提にないと出てこないものでした。
吸血鬼の身で咄嗟に想像したのです、それが「人間の感覚」で「大変なこと」だろうと。
それだけ人間の感性に馴染んでいたのでしょう……青年と一緒に生活してきたから。
何より、ハナコ自身こそ、青年が撃たれることを深刻に捉えている。撃たれたら嫌だって思う。その感覚が、「人間を守るのが仕事」の退治人に通じると思って、脅したわけです。
「人を傷つける事」を退治人は深刻に捉えるだろう……人間社会も深刻に捉えるだろう。だから「大変よ」と。
そのリスクに縛られて動けなくなることを期待したのでしょうが……。
ロナルドはその期待の裏をかき、「目の前の吸血鬼を撃つこと」のみに集中し、その為なら人を撃ったって構いやしないという……リスクを無視した暴力をつきつけました。
「危険人物」になりきったんです。
だからこそハナコは、自らと青年に襲いくる「危険(ロナルド)」に自分なりに対処した。
1死でもそう。「危険人物」でしたよね、ロナルドは。
まともな訪問者ではなかったし、例え拒否したくとも言葉だけで追い出せるように思えない振る舞い。
武器を持っていて、体格もよくて、態度も荒くって……。
あの勢いでは当然、「話が通じない、やばい奴だ!」と思われるでしょう。
思われていいんです。
だって、「危険人物」になりきれば……
その「危険」に、相手がどう対処するのかが、わかる。
退治人との戦闘を想定していない市民なら、ロナルドに従うしかないでしょう。
抵抗から戦闘に移ったとしても、本気の殺意があるかどうかは、ハナコの時のように行動に現れるはずです。
そして最終的に極まったら……
通報した。
私がムキムキマッチョメンだったら組み伏せて縄で縛ってから通報したかったかもしれない。
身を守る為に、社会に危険人物を解き放たない為に、通報するという発想はどこかで出てくるでしょう。
そして、誘拐犯ならそれができないんです。
だって、子供を誘拐して城に留めているなら、そこに警察を呼ぶのは自分で自分の首を絞める行為ですから……。
どれだけ猫を被ろうとも、誘拐した子供が見つかれば真相がわかってしまう。
ロナルドが積極的に調査しようとするほど、いずれ本性を表すことになるでしょう。
つまりシンプルに言えば……
通報したらほぼ間違いなく「無害」!
通報しないなら警戒を解くな!
って感じですかね。
ハナコの気持ちを代弁したロナルドの感じだと、もうちょっと細かい部分を自分なりに判断してそうですが……公的機関に助けを求められるかっていうのは、一番確実な基準です。
ロナルドの行動は普通に通報されます。でも、それでいい。
いや、それこそがミソであると。
誰も実態を知らない「吸血鬼ドラルク」……
それなら「吸血鬼ドラルク自身」に「自分が通報できる立場か」を判断させたらいいじゃない。
これでどちらにしろ、「何もわからない」なりに情報が手に入るぞ~!やった~!
って……
ソレだと通報されたらロナルドが捕まっちゃうじゃん!!
と、思いきや。
そうでもないんですよね。これ。
「牽制」と「退治」
<半田白>
歩きタバコでスマホをいじりつつ
野良カメをいじめる退治人だよ
<半田桃>
コラッ やめないか!!
<半田白>
いえ? これはシガーチョコだし
カメが吸血鬼化してるかもしれないので
牽制しつつ他の退治人に連絡していたのですが?
<半田桃>
えっ あっ…
━『吸血鬼すぐ死ぬ公式ファンブック 週刊バンパイアハンター特別増刊号 2』,p.108
これは、「吸血鬼対策課になる為の練習」という題目で「問題のある退治人」の演技をした半田の父・白と「吸血鬼対策課」役をやった半田桃のやりとりですけれども。
これを見るに、
一見して『問題がある』と判断される「野生動物をいじめること」も、
「武器で敵性吸血鬼らしき対象を牽制しています」と言われてしまうと、
例え警察(吸対)でも口を出しづらくなる様なのですよね。
この会話の後、父・白が「違うんだ 少しリアルな感じを出そうとしただけで」と言い訳するのも、輪をかけて「線引きの難しさ」を強調するというか……。
確かに、本当にカメが吸血鬼化していて市民を襲おうものなら、それを放置した方が「退治人は一体何をやっていたんだ」という話になるわけだし。
「見た目」で明確に判断がつかない時は特に、そのうち市民が近づいてしまう可能性も高い。その危険を先んじて肩代わりしていると考えると、退治人が「一歩踏み込んだ干渉」……「牽制」をするのはリスク管理的に正解なんですよね……。
「危険な吸血鬼から市民を守る」という仕事である以上、「よくないこと」に見えても「必要」なシチュエーションって結構あるんでしょうね。
「今の物音、吸血鬼?」って、ゴミ捨て場のゴミを漁る場合もあるかもしれないし。
一方で、無闇にただ「危険な吸血鬼」とは到底思えないものを勝手にいじくっているとかだったら……そこに駆けつけ事情を確認するのも警察の仕事としては正解なんですよね……。
なんだかこの世界。
退治人と吸対(警察)が互いに「ただ仕事を全うするだけ」で必然的にぶつかって「あ、ハイ、ご苦労様です…」みたいになるのが、別に珍しいことでもなさそうというか。街でもあるんでしょうね、偶に。それが(一般人である白さんの)「少しリアルな感じ」という表現に滲んでいます。
一方、サンダーボルトのように「過剰な”退治”行為」が問題視される(217死)場合もある。
サンボルの場合は「変態」への過剰反応でしたが……。
要は、放っておいても市民を害そうとはしない「敵性吸血鬼と言えるか曖昧」な段階においては、過度な対処……「退治」までいってしまうと同業から見ても「やりすぎ」のようです。
「牽制」は容認され、「退治」は過剰……。
なるほど、つまり。
①「牽制」に至るだけの「市民の安全」に関わる理由があって。
②「過剰な拘束」「過剰な攻撃」……そういう「退治」の範囲に踏み込んでいなければ。
例え結果的に「牽制対象が無害」であっても「仕事を全うした」として、不問にする……のが通例なのでしょう。「もし危険だったら」というリスクを見て動いたと言えるから。
それがいちいち罰せられるようでは、退治人の仕事ができませんからね。
簡単に言えば、
「通報されても大丈夫なライン」の「通報されかねない振る舞い」
ってのが存在する訳です、退治人には。
そういう目で見ると……確かにロナルドは、1死序盤でも3死でも、「退治」にならないよう調節してた感じはします。
ハナコの時も……無力化(攻撃して弱らせる/眠らせる等)したり、懲らしめてはいない。滅したわけでもない。
青年ごと撃ってしまったとしたら「大変」でしたけれども。それは相手にそう思い込ませただけ。
「武器を構えて攻撃の動作をやっただけ」「敵と思わせる振る舞いをしてみただけ」。
ドラルクの城に乗り込んだ直後も……。
勝手に扉を開けて大声を出すとか、「退治しにきたぜ!」と宣言して銃をつきつけるとか、威圧的に自白を迫るとか。
やってることはめっちゃ怖いのだけれども、でも。
「武器を構えて攻撃の動作をやっただけ」「敵と思わせる振る舞いをしてみただけ」。
「牽制」の範囲を脱しては、いない。
あと、理由もちゃんとありますよね。
「牽制」に至る理由。
「カメが吸血鬼化しているかも」みたいな……「市民の安全」に関わる理由があれば良いわけですが……。
3死では、ハナコの言動が「市民を吸血殺害する危険な吸血鬼」そのものでした。結局本気ではなかったのですが、「本気ではないかもしれないから」で放置はできません、流石に。退治人として牽制くらいはしないと嘘です。
そして1死では……なんと言っても、子供の安全がかかっていました。
次→『切迫した状況』
## 「切迫した状況」
だって実際、**ドラルク城に行ったきり子供が帰ってきていない**。
そしてドラルクがどんな人物か、依頼人にもロナルドにもわかりませんでした。誰も実態を知らなかった。
あの虚弱さで「真祖にして無敵」という噂が通用していたというのは、そういうことですね。
そもそも「無敵」がどれくらいの強さなのか見当もつきませんし。
一方、確かな情報もあります。**ドラルク城の存在**です。
ドラルクが埼玉に住み始めたのは戦後しばらくしてから(FB1)ということなので50年以上はあの土地に建っていたことになります。50年というと、1世代は確実に入れ替わる程度の月日です。**親世代にとっても自分の親が子供の頃からあった建物**。それが散々観光材料にしても所有者から何の音沙汰もなく、昼間に住人を見かけないとなると、もはや「誰かが住んでいるのか?」という部分から疑わしいですが……。
あの城には**窓**がある。1死脱出の際につかいましたね。そして、**夜になると明かり**がつきます。
(『ほぼ日刊アルマジロのジョン』の37~40では旧ドラルク城時代のジョンの様子が描かれています)
こうなると**「何者かが住んでいる」**というのは、噂といえど、かなりの**信憑性があります**。
吸血鬼が住んでいるか、人間が住んでいるのか。
いずれにしても城に主がいて、**意図的に客を帰さないのなら誘拐(監禁)**であり、子供は危険に晒されていることになります。
城の主が友好的な可能性も無いとはいえませんが、友好的なら**どうして夜になっても城にやってきた子供を帰宅させないのか、連絡の一本もさせないのか**謎です。観光バスだって通るような場所ですし。未開の地でもない。帰そうと思えば帰せるし、それが憚られるなら連絡手段だってありますよね?生活しているんだから。
でもそんな気配はない。「子供の近くにいるであろう何者か」が**一時的な保護者として動く気配がない**、というのはなかなか不安にさせられます。
しかも、**1死ラストで朝日が登っていた**のをみると、**ロナルドが城に駆けつけたのは深夜以降**と考えるのが自然ですからね……。日付も変わって暫くという時間帯なら……吸血鬼の生活リズムから見ても「**わざと城に留まらせている**」ように思える。
さらに言うと、1死冒頭で依頼人の周りに**集まっている人数**。結構います、**大人が何人も**……。
おそらく**近所の住民**でしょう。
あの人数で「子供がいない!」と心配しているなら、まもなく夜も明けようという時間まで**城以外のどこも探していないなんて、そんな訳ない**と思うんですよね。
**周囲の捜索をした上で、残るはドラルク城のみ**、という状況だったんじゃないでしょうか?
心当たりのあるスポット、子供の足で行ける場所の一つ一つを確認して、ここにもいない、あそこにもいなかった、**じゃあ探していないのは、あの城だけじゃないか**、って。
この時点でだいぶ、フラットな視点から見ても**「城の主に対する不信」が生じている**。
それも、**結構な濃度**で。
吸血鬼かどうかに関係なく、両親や地元民は**「ここに子供来てませんか?」と訪ねるべきだと考えていた**筈です。ただ、強くて危険な吸血鬼だったら手に負えない、そういう噂が実際あるから、**退治人を呼ぶしかなかった**。
相手が危険な吸血鬼ならば、その脅威から**一刻も早く、子供を助け出したい**ですよね。
吸血されると体力が失われますし、**噛み付かれたり刺されたり、怪我をしているかも**しれない。
そうなると自力では逃げられない……さらに**子供は大人より限界も早い**ですから、本当に**スピードが重要**です。
ここですよね。
やっぱり、**状況的には切羽詰まってる**んですよ。
確かに相手が「どんな人物か」はわからない。
でも**疑うに足る条件**、強引になってでも**判断を急ぐ条件**は揃ってしまっている。
市民から見ても、そして、社会を守る立場の警察から見ても、**「退治人の牽制」を容認するだけの理由**は在る……。
「**通報されても大丈夫**」です。これは。
さらに言うと、
3死の「空砲ハッタリ」が「1死でロナルドが本来やりたかった流れ」の例示として描かれたなら……銃もハナコの時のような「空砲にいつでもできる状態」だったんじゃないでしょうか。戦闘も想定しているけれども、ハッタリで終わる事も想定している。
そうやって**安全に「攻撃のポーズ」で脅し**て、抑止力&判断材料に、と。
ハナコの例の**華麗な解決**を見ていると、「**これがやりたかったんだな**」って、感じですが……。
いや……うん……。
正直、空砲とか「実は安全」とかそういうのに関係なく、**ドラルクにロナルドの脅しは全然効いてない**んですけどね……。
## 「脅し」というコミュニケーション
ハナコの**脅しを「リスク無視言動」で無効化**したロナルド、でもわかるんですが。
「これって**こういうリスク**があるよね?それ嫌だよね?嫌なら**どうするべき**なの?」
という**認識を共有していないと、脅しって全然効かない**んですよ。
相手の文化や価値観に響かないと、**無効**。
**「脅し」というものは実は、「文化的なコミュニケーション」**なのです……。
そしてロナルドの「脅し」の意図は**全くドラルクに通じていません**。
> <ロナルド>
> とぼけるなショタコン!とっととさらったガキを出せ!
>
> <ドラルク>
> 誰がショタコンだ
> 私の好みは うなじのキレイな美少女だ
>
> ━『吸血鬼すぐ死ぬ 1』1死,p.9
通じていないから、この返しになったのです。
上のやりとりにおいて、ロナルドの言いたい事は「**とっととさらったガキを出せ**」に詰まっていた筈です。
だってそうですよね?
俺は**お前を誘拐犯だと思って**いる、**だから退治**にきた、退治されたくないなら**子供を早く返せ**よ、とそういう話なんですから。
けれど、**ドラルクが反応を示したのは「ショタコン」というワード**です。
つまり「さらったガキ」という言葉を全然重要視しておらず、**「子供を攫ったと思われている」ということに不思議と無関心**なのです。訂正内容が「**好みは美少女**」なあたりも、**「小児誘拐の疑いから逃れたい」という意思を全く感じません**。
「これって**こういうリスク**があるよね?それ嫌だよね?嫌なら**どうするべき**なの?」
の**脅し構文**の中の、初っ端「**吸血鬼が誘拐なんかしたら退治されるよね?**」が、まず、**伝わっていない**。
**ここが伝わっていないので**いくらドラルク側に「退治されたくない!見逃してほしい!」という意思があったとて、ロナルドが望む「誘拐した子供を返す」とか、「自分は誘拐犯でないという主張をする」とかの**反応が引き出せない**のです。
いや本当に……。
改めて読むと**一言も……本当に一言も「誘拐犯じゃない!私は無実だ!」という内容は言ってはいない**んですよね。1死ドラルクって。
## 退治される吸血鬼って、何?
**「誘拐したら退治される」がわからん**とかそんな訳あるかい、て人間の感覚だと思っちゃうんですが、どうも事務所にくる前のドラルクって**その辺の基準ガバガバ**っぽくて……。
> 退治人の相手は下等吸血鬼や
> 悪意を持ち人に害なす輩
> 私のような知的で友好的な高等吸血鬼は
> 人間社会と共存し得るのだよ
>
> ━『吸血鬼すぐ死ぬ 1』2死,p.32
この2死での、いかにも**「退治人のこと当然わかっているとも」と言わんばかりの耳障りの良い言葉**。あるじゃないですか。これ言ってる本人、**1死で人間2人を殺そうとしてましたから**ね……。
退治人を「これまともに食らったら普通の人間は死ぬぜ」のコンセプトが明確すぎる**罠部屋に誘導して「エジキになりたまえ!」した上**、その「**人間死ぬ罠部屋**」にあったのと**同型の兵器で攻撃を放つ**ということをやりましたから。彼は。
> 退治人君
> **子供を庇って斃死**とはドラマチックで良かったなァ
>
> ━『吸血鬼すぐ死ぬ 1』1死,p.23
こんな**殺害宣言**をしつつ。
いや……「友好的」……とは……?
でも**ドラルクは本気**です。
264死なんか事務所に来る前の時制ですが、あのエピソードでもドラルクは**「吸血鬼から子供を守った功労者」だったのに**ラスト、吸血鬼対策課を見た途端に「ゲェー」と**無条件に嫌がり逃げてしまう**んですよね。
**「人を助けたから退治対象から外れる」と咄嗟に判断できなかった**んです。
どっちも、**わかんない**んですよ。
**何をやったら退治されるのか。どういう者が退治対象でないのか。**
だから武器を見せられ「この城であのガキに何かあったらただじゃおかねえぞ」と言われても、**「退治されたくないから攻撃的な行動を控えよう」なんてことも思わなかった**。
> 私はコウモリになって先に行くよ
> あの小僧の血が残っているうちに間に合うといいな 退治人くん!
>
> ━『吸血鬼すぐ死ぬ 1』1死,p.13
むしろ積極的に**子供を襲おうと**した、退治人を**罠に誘導**した、人間を**殺そうと**した……。
「**見逃してください**」と言いながら「**見逃せるわけないこと**」をどんどんしまくっていた。
退治人視点、**謎すぎ**ます。ドラルクの行動。
2死で「**困った市民**」を謳うくらいなら、**1死でこそ、その立場でいればよかった**はずなんです。
「子供に何かあったら困る退治人」なら、じゃあ**「何の罪もない市民」である私には気を配らなくていいのか?**って思うじゃないですか。**あんな脅し**されて。
そう思った時点で、**「何の罪もない市民」であることが、自分の立場を守るのに重要**だと気が付ける。
**「何の罪もない状態の私」に攻撃した時点で、退治人は終わり**なんだ。
**「何の罪もない市民」こそ「退治人の弱点」**であり、それだけで**退治人に対して強い立場**になれるのが、わかる。退治人の態度に苛立ちを覚えればこそ。
「何の罪もない市民」の立場を捨て、**加害者になろうとする利点は一つもありません**。
しかし**ドラルクには、それがわからなかった**のです。価値観が違うから。
「脅し」は通じなかった。通じるわけがなかった。
この「通じるわけない」って**理屈そのものに、ロナルドは気がついていなかった**んですよね。
だからおかしくなった。
## ドラルクにしか起きないこと
ロナルドは、ハナコに対しては「脅し」のコミュニケーションを成功させました。
「撃たれたらただじゃすまないだろう」という**危機感**と、「**回避**する為にどうするか」という**思考**によって、**青年やハナコと通じていた**からです。
**判断も整理**されていましたね。
「吸血殺害宣言」をされたから**警戒度を上げてハッタリを**して。
結果ハナコが青年を守り、ロナルドに反撃しなかったから**「危ない吸血鬼ではない」と警戒を取り下げた**。
でもそれは、**ドラルク相手には上手くいきませんでした**。
肝心のところで価値観が違って「脅し」が通じなかったし、「脅しが通じるわけがない」のにも気がついていなかった。
むしろ1死の中では、**牽制する度にどんどん「やらかしの危険さ」がエスカレートしていった**くらいです。
ドラルクなりに理屈はあったのですが……ロナルドにわかるわけもありません。
そしてその謎のチグハグな反応から、「ドラルクがどんな存在なのか」をロナルドは判断しきれませんでした。
**最初から最後まで混乱しきり**だった。
いや、間違いなく**「人間を殺そうとしてきた」って時点で「敵性吸血鬼」**ではあるのですが……。
**それをわかりながら**ロナルドは、**混乱**を極めていた。
**明らかに「こいつ人間殺そうとしたよな今!?」ってちゃんと認識した後**ですら……罠部屋とかビーム発射とか、そんな派手なことをやらかした後でさえ。
ロナルドは……**何故かドラルクの「退治」をちゃんとしなかった**ですよね?
「後回し」にしちゃっていました。
ああ、退治というと曖昧かもしれません。要は、「ドラルクの再犯を防ぐような対処」のことです。
反省させるのは無理にしても、**麻酔で眠らせる**とか、**身動きとれないように拘束**するとか。
**ゼンラニウム(5死)やアラネア(75死)の時はやっていたこと**をしていない。
「今にも人に攻撃しようとしていた吸血鬼」という、緊急性のある場面、**現行犯**なのに……。
その**現行犯の居城に、まだ市民がいる状態**なのに。
なあ、そんなに**自由に動ける状態で放置**して会話して、いいのか?
本当に**妙**なんですよ。
ドラルクがおかしなことをするたびに**武器を取り出しはする**んだけれど、**問い詰めることは問い詰める**んだけれど、**ドラルクと一緒に自爆でドタバタしたら**もう、不思議と…
…リセットしたようにロナルドの**「退治意欲」が消えている**んです。
彼は「市民を守るため」にやってきたはず、それだけは間違いない。
それなのに、退治するのか、退治しなくていいのか……。その**判断が、異様に鈍って**いました。
これは。
**「ドラルクの能力」としか言いようがない**です。
> ハハハ…それだ!
> 誰より弱いお前は
> 誰の敵にもなり得ない…
> まさに無敵の吸血鬼か!
>
> ━『吸血鬼すぐ死ぬ 23』278死,p.25
ノースディンの言う通り、「**弱いから無敵**」なのだと思います。
勿論、クラージィさん(ドラルクの弱さに退治する気持ちを削がれた19世紀の悪魔祓い)と同様に、**ロナルドの元来の「素直さ」がなければ成り立たない状況**だったとは思いますが。
「印象だけ」の話をするならば。
どうも**ロナルドにとって、ドラルクは「退治対象扱い」できない**らしい。
## 敵だけど危険では、ない?
ドラルクが1死初手で「即死んで降参」した流れでのことです。
あの時、**ロナルドは戦闘態勢を解除**しましたよね? 直前に「笑えない冗談だな!」と銃を構え、一気に**「戦う気」になっていたのに**。
> お前ほんとにドラルクか!?
> コスプレした観光客とかじゃなくて!?
>
> ━『吸血鬼すぐ死ぬ 1』1死,p.8
次の瞬間には、「コイツ**誘拐と全く無関係**な存在では?」と思っちゃったんですよね。
城に入る前の段階でロナルドは「**城の主=誘拐犯?=敵性吸血鬼?**」という思考でしたので、
「敵性吸血鬼じゃなさそう→城の主(ドラルク)じゃないのかな?」と発想したのでしょう。
「降参するドラルク」を見て瞬間的に、そう思った。
「退治するやつじゃなくない!?こいつ」と。
元々「相手を見極めよう」というつもりで接していたロナルドにとって……。
**勝手に弱って、焦って助けを乞うて、時に泣いて……**。
そんな**ドラルクのような態度**は特に……**「こいつ危険じゃないのでは??」という気持ちが沸いてしまうもの**だったのではないかと思います。
退治人の武力に抵抗できない、**危険度の低い存在に思える**。
本当に無根拠で、**なんとなくの感覚**です。
危険ぽくない!と思ったところで、1死の中で「こいつは危険なことをしてたぞ!」という**事実は何も変わりません**し。ロナルドもわかっちゃいるでしょう、ドラルクが「危険な言動」を見せるたびにしっかり反応していますから。
でも一方で、**瞬間瞬間に、「退治すべき」という切迫感が引っ込んでしまう**。自爆で大騒ぎした途端に、どうしようもなく。
危険とわかっているのに、**その瞬間においては、危険と感じなくなってしまう**。
そんなこんなで、**「敵だよ!」「退治しなくていいよ!」「敵だよ!」「退治しなくていいよ!」**と逆方向の感覚が**同時に迫って**きて、ロナルドの振る舞いは……
**「敵性吸血鬼」**に対するものなのか、**「退治しなくていいオジサン」**に対するものなのか……
そのどちらもがゴチャ混ぜになり、**ぐっちゃぐちゃになっていった**のだと思われます。
## 退治人ロナルドの振る舞い
そもそもロナルドって元々「**妙に抜けてるし変にシャイ**(カメ谷談/105死)」なのに、「**ハンサムで自信満々**」な**「退治人ロナルド様」として振る舞っていた**わけじゃないですか。
**シャイな「ただのロナルド」がやらないことを「退治人ロナルド」はやっていた**んですよね。
**そのモデルは「アニキ」**です。ヒヨシそのものではないんだけれども、**ロナルドが思う憧れのアニキ**。
泣いている依頼人に「任しときな」と豪語して、安心させて、堂々と未知の城へと乗り込んだりする。
ロナルドにとって……
「**退治人であること**」と
「**自分以外のイメージを取り入れて振る舞うこと**」って、
切っても切り離せないものなんです。
本当に、**最初から**。
**憧れを目指す、というのが彼が退治人になった動機だから**です。
そして退治人全体に言える事ですが、**「退治対象」と「市民」に対して、同じ態度をとる事はできません**。
**市民には安心を与えるべき**だし、**市民を傷つける輩には容赦してはいけません**。
「安全な相手」か「危険な相手」か迷う場合は**「危険だったら」というリスクの方をキチンと見る**、というのも大事ですね。市民は専門家ではなく、上手に疑えませんから。**「牽制」の考え方**はそれです。
そのあたり、**退治人の具体的な仕事についてはギルドの先輩方から学んできた**ことでしょう。
さらにさらに、**「敵性吸血鬼に対する退治人ロナルド」は、時と場合によって振る舞い方を変えねば**なりません。
例えば、下半身透明(50死)を組み伏せる直前には、油断させる為に「ビビってパニックになったフリ」をしましたね。
本当は冷静な退治人モードだったのに、セロリを怖がる時のロナルド(青年ロナルド)のリアクションを再現していました。
退治人ロナルドのまま、「ただのロナルド」の振る舞いを一時的に形だけ出したんです。
つまり、こう。
[図]
点線部は表面上の一時的な振る舞いで、本気でない。
退治人たるもの、**退治に必要ならば**最低だろうが格好つかなかろうが、「退治人ロナルド」のイメージと違う「素」の振る舞いだろうが、**やる**。「**退治人ロナルドが、退治人ロナルドらしからぬことをする**」っていうシチュエーションも**当然視野に入れている**って話です。
アラネアとのデート演技(75死)もそうですよね。「アニキは高潔(46死)」という話をしていたロナルドには、仕事中にナンパするのはイメージ違い。**「憧れのアニキみたいな退治人」とは言えません**。でもやる。**必要だから**です。
### 参考資料があるのかどうか
そしてここで**注目なのが1点**。
ロナルドはアラネアの前で……「**仕事中に女性を口説く軽薄な退治人**」という「ロナルドからかけ離れたキャラクター」に**急に豹変することはできませんでした**よね??
「色仕掛けに応じたしょうもない退治人」ではあったけど、**「デート慣れしていないロナルド」が普通に、そこにいた**。
そうです。
彼は「退治に必要」とあらば**「退治人ロナルドらしからぬこと」「ロナルドが普段しないこと」も全力でやる**んですけれども……。
**「自分の思考にない、イメージもつかない何か」に、急には成れない**。らしい。
彼には「仕事中に女性を口説く男」がどう振る舞うかなんて**わからない**し、デートで何を話すかも**知らない**。だから「ロマンチック案内しますぜ」とかいいながら、**道中会話も何も、出てこなかった**わけです。
アニキはそんなことしない(?)し、自分にもそんな経験はない。
**参考にする知識も何もない**から。無。
そして**「普段と違うことに挑戦する、ただのロナルド」**が出てきて、**どうにか頑張る**ことになる。
で……1死の話に戻るんですが。
**参考にする知識**も何もない場合には、**演技していても何も出てこない**、とすると……。
序盤の「**理不尽に自白を迫っていたロナルド**」は、「**参考にする知識」があって演じてた**ってことになりませんかね?
状況としては、**素早く接触して反応を見る為**にも
「**勝手にひとんちのドアを開けて根拠なく疑って、いっそ通報されるくらいにやばいやつ**」
をやらなくちゃならなかったんですが……。
この条件じゃ**アニキっぽくはない**。もちろん**ロナルド自身も普段しない**でしょう。
でもあの時のロナルド……。
**言葉に詰まったりもしなかったし、ぎこちないってこともなかった**ですよね。
つまり、**モデル**がいる。**彼の脳内に参考資料**があった。
嘘……。**ロナルド周りにそんなやばいやつ**いる?
います。
「**半田桃**」です。
### 理不尽モデル・フレンズ
> <ロナルド>
> 夜はおじさんのアナログスティックで
> プレイしようねってそういう趣味か
>
> <ドラルク>
> ド変態はお前だ!!
>
> ━『吸血鬼すぐ死ぬ 1』1死,p.9
この「**人を勝手に変態に仕立てて理不尽に怒ってくるやつ**」が分かりやすいんですが。
> <半田>
> 何だ? 可愛い女の子じゃなくてガッカリしたのか?
> 下半身に支配された下衆め法が許せば叩き斬るところだ
>
> <ロナルド>
> 何も言ってねーだろ!!
>
> ━『吸血鬼すぐ死ぬ 2』14死,p.28
半田初登場(14死)で、**まるきりそのままの理不尽がロナルドに降りかかる**んですよね。
あ、これ「半田の真似」なんじゃん。と思ってみると、**色々謎が解け**るのもあります。
なんかずっと、1死の「アナログスティック」のくだり、**「ピュアで安全なロナルドの性癖(おっぱい)」と同じ口から出たと思えなくて**不思議に感じてたんですけど。
変態性癖の解像度が高いんじゃなくて、**「半田が言いそうなこと」の解像度が高い**って考えると、すんなり腑に落ちたんですよね。
顔を近づけて「近い」ってなってるのも、**半田にされてきた威圧をドラルクにもやった**んだなあ、という感じです。(『OKわかった 顔が近い』/1死)
さらに14死の中では、「隠しだてをしてみろ 殺すぞ」「マズイこと喋ったらブチ殺すからな」と半田とロナルドが連続でドラルクに凄むシーンもあります。この**構図もおそろい**。
おそらくは……普段の自分はしない「**理不尽でやばくて通報されるけどギリギリ捕まらない感**じ」を作ろうと思った時、彼の脳内で**「半田」が参照された**のでしょう。
「半田っぽくしよう!」と彼の中で言語化された意識があったかどうかはわかんないですが……。
やばいやつというと、こんなかんじか、と。
とにかくロナルドは退治の場面に応じて、**「こういう振る舞いが必要だ!」というのを「自分」や「自分の周囲」のイメージから咄嗟に引っ張ってきて再現する**、ってことをやっているようなんですね。
で、1死ドラルクがやらかし始めてから、**その参照システムが、バグった**んです。
なんといっても、
「**敵性吸血鬼**で**退治しなくてよく**て、弱くてアホで**危険じゃない**けど普通に悪意があるし**危険**」
という**意味不明存在**に対してどうしたらいいかなんて。
彼の中に「参考にできるもの」がない、どころか、「どういうものを参考にしたらいいか」もわかりませんので。
「デート時の会話」は脳内検索しても0件ですが、それどころではない。
**適切な検索ワードがわからない状態**ですね。
「退治人ロナルド様」の「ただじゃおかねぇ」の**警告も全然通じない**し。
警告を聞かないなら**退治……と思ったのに「その気がなくなる」**。
けどそんな**反抗的**な相手に**ハッタリを撤回するわけにはいかない**のはわかっている……。わかってはいる。
でも、どうしたら……どうしたら。
**「よし! お前あのガキにViiとかあげろ!」**とか、もうどういう立場で物を言ってるのか謎ですもんね。
「協力してもらえるくらい無害な相手」と思っているんだったら**所有物を奪うような言い方は雑すぎる**し、少年を襲うようなことを言っていた敵性吸血鬼として見ると、**協力できると思わない**のが前提でしょうし……。
後これちょっと**カメ谷っぽい**んだよな……。
威圧するでもなく、**堂々と真面目に狂った提案**してくる感じが……。
> <カメ谷>
> 退治人ロナルドさん!
> ぜひこの人形に呪われたりしてみてください
>
> <ロナルド>
> うおおお嫌だ
> テメーがやれぇえええ
>
> <カメ谷>
> ! 確かに記者自身が呪われた方が面白そうですね
> カメラ頼みます 私に異常が起きたら動画も撮って
>
> ━『吸血鬼すぐ死ぬ 5』50死,p.35
50死のこれです。
頭の上に電球がパッってついて、とってもキリッと仕事の顔……という。
**「お前がやれ!」的切り返しに**1死ロナルドも50死カメ谷もすごく**素直に検討**するし。横暴なのに平等。
そっか、「敵だけど危険に思えないドラルク」に対して、「友達だけど危険なカメ谷」。
状況的に丁度……丁度……いや別に丁度よくないよ……。**カメ谷になってどうするんだココで**。
**絶対におかしい**んですけど、もうね……「退治すべきときに退治する気にならない」って時点で**もう狂ってる**ので、どうにもならないですよ。
今この瞬間、「どんなロナルド」になるべきかわからない。
当初の**「やばいやつで在ろう」というエネルギーだけ**が、残ったまま。
「退治」に臨むはずの容赦のないロナルドが「危機感のないガキ(市民)」に厳しさを向け、炎上を恐れるロナルドは卑屈に謝り、カメ谷のごとくvii提供を閃き、シャイなロナルドが自伝を持ち出し、半田のごとく強引に押し付けて、ちょろいロナルドが作戦に耳を貸し、ロナルド様が問い詰めて、ただのロナルドはqsq破損に大いに焦り、ロナルド様が少年を庇い。城爆発を見つめながら、ただのロナルドは憐れんで気遣い、慰めた。
自分の中身をひっくり返して、使えるのか使えないのかわからないまま、「退治する気が消え失せる」という謎現象に抗いつつ……。
とりあえず**「強気」であろうとは、したのでしょう**ね。謝りはしなかった、ギリギリ。
パニックでした。ただただ。
でもパニックだったからこそ、**「他の誰に対してもしないような態度」が、ロナルドから出てきた**。
「ただのロナルド」だったら出ない押しの強さで、「ロナルド様」ならやらないことを、「やばいやつエネルギー」に従うままに、繰り出した。
こうやって生まれたんです。
対ドラルクにだけ発揮される、「ハッタリと牽制の延長」のような……
「退治人ロナルド」としての「退治人ロナルドらしくない振る舞い」が。
**発生したのです。あの夜に、突如**。
だから敢えていいましょう。
**ロナルドは、一夜でドラルクに狂わされたのだと**。
## 失敗と意地
> 【ロナルド】ドラルクに対しては意地っぱりの退治人。突然、家に入ってきたオッサン相手に当然ちゃ当然。
>
> ━『吸血鬼すぐ死ぬ 12』140死(柱情報),p.160
この柱情報の、「突然、家に入ってきたオッサン」とは2死の出来事です。
だから**「1死のロナルドの態度」の理由にはならない**。
**1死の「当たりの強さ」には、2死以降とは違う理由があった**ということ……。
まあそれはそうですよね。
1死の時点では**ドラルクがどんな人物かも知らない**んですし……知らない人に向かっていきなり当たりが強いのは、**相手が原因の態度ではありません**。
ロナルドは、**誰であってもそうする予定だった**のです。
その行動は**城の主の視点、明らかに「やばいやつ」でした**が、それにはちゃんと**理由**があった。**「市民を守るための理由」**が。
**ハッタリ**だった。牽制だった。
それは「退治人の仕事」に必要なもので、**吸対でも咎めることはできない**。
だから、問題なのはその先……。
自分の行動を**説明する機会がなかった**ことです。
**ハッタリも牽制も、撤回できなかった**ことです。
> おどかして悪かったな 空砲だよ
>
> ━『吸血鬼すぐ死ぬ 1』3死,p.56
3死ではきちんと出来ていた**「ちゃんと意図があったんだ」という開示が、1死ではできていなかった**。
これでは勘違いも生まれます。
いくらハッタリで牽制で、「敢えて」の行動だと言っても、それが**「初対面の行動」で、ずっと撤回されなかったら「本気ではなかった」なんて相手は思わない**でしょう。
つまりそれが**読者の視点**であり、**ドラルクが見てきたロナルド**なんです。
退治人の仕事に「ハッタリ」や「小芝居」が珍しくないなんて知るはずがないし、退治人の尋問の対する理想的な受け答えなんてわからないし、吸血鬼が退治人を通報するなんて思いつかないし、現行犯ですぐさま捕縛されなかったのを「おかしい」なんて気が付けないし、ロナルドが「今までにない行動をしていた」なんてわかるわけがない。彼が本当はピュアで人の良い青年だなんて、そんなこと言われても。
**吸死世界の人間社会**のことも、**退治人**のことも、勿論**ロナルド**のことも……**ドラルクは、何にも知りません**。
読者は1死で初めて吸死世界に出会うんですけど、**ドラルクも同じようなもん**なんですよね。
**ずっと城の中にいたから**。
そして、読者が「これはギャグ漫画だ」と思って安心して読んでいるのと同じくらいの軽さで、ドラルクは**「死」や「負傷」について全く深刻さを感じていません**。
だから、「攫われた子供」と聞いてもロナルドが**ピリピリしている意味がわからない**し、そんな状況で子供を襲おうとしたり、退治人を罠にかけ攻撃しようとしたことが**どんなに「洒落にならない」か全然わからない**。
だから事務所まで押しかけ、**何ともない顔で「自分は友好的な吸血鬼」だと主張できる**。
1死で、ロナルドは「終わった」と思いました。
「やばいやつ風のハッタリ」を撤回する具体的なキッカケを掴めないまま、ドラルクは朝日で死んで。
終わった。ムチャクチャな相手に、ムチャクチャな対応をしたまま。
どういうことだかわからないまま。
何もかも**予想外**で、狂ったまま**とんでもない事に**なって、**何にもうまくいかなかった一夜**ですよ。
ロナルドはその時の**「狂った自分」ごと封印しよう**としました。箱詰めし、記憶の奥底に沈めて、もう二度と開くまいと思いました。
そんな気持ちも知らずにドラルクは、**封印を内側から気軽にババンと破って再登場**したのです。
そのドラルクと一緒に、**ロナルド側の「狂った自分」もババン**と出てきてしまったんでしょう。
こうして考えると、**ロナルドの方こそ「変身失敗」していた**のかもしれませんね。
> 変身とは吸血鬼が持つ超自然的な能力の中でも複雑なもの
> **失敗して変なのになったり戻れなくなったり**し得るものだ
>
> ━『吸血鬼すぐ死ぬ 1』8死,p.113
何か別のものに**一時的に変わろうとしただけ**なのに、「**失敗して変なのになったり戻れなくなったり**」してしまったんですから。
ドラルクが変身失敗した瞬間に、ロナルドも変身失敗したのです。警告を無視して挑発してきた吸血鬼を目の前に……あの瞬間にただドラルクをふん捕まえておけば、「退治人ロナルドとしてのあるべき姿」になれたのに。
すべき退治をし損ねて、ロナルドは「やばいやつ風ハッタリを延長した狂ったロナルド」から戻れなくなった。それを封印することすら出来なかった。ドラルクが「突然、家に入ってきた」為に。
> テメーみてーなのぶっ殺すのが仕事ですけど!?
>
> ━『吸血鬼すぐ死ぬ 1』2死,p.32
2死のロナルドは、上記のように……かなり**言葉や振る舞いが「危険」**でした。印象として**過激**だったし、**怖いこと**も言っていたと思います。ドラルクに再会した初っ端から。
でもそういう「言葉が過ぎる部分」を解きほぐして考えてみると、ドラルクって「**深く考えずリスクも顧みずに人間に致死の攻撃をしてきてしまうような相手**」で……。大したことだと思っていないなら、**同じ事を繰り返しかねない**し。
それが元気に町にやってきてしまったことを**厄介**に感じるのも、**退治対象**とするのも**警戒**するのも**牽制**するのも、**間違っちゃいない**んですよね。いくら弱いとはいえ、**トラブルの元**です。
ロナルドの意図は「**市民を傷つけようとする輩に容赦しないこと**」であり、それは退治人として必要な姿勢でしょう。
ただ、言葉選びや振る舞いとしてみるとどうも**強引で、理不尽で、ぶっ壊れている感じ**がしてしまう。2死以降を見ていると。
意図は「おかしくない」のに……ただ、**出力された言動が狂気**。
**自分の振る舞いが自分でコントロールできない**のです。
結局のところ、**ロナルド自身が一番**「ドラルクに対してどうしてこうなるのか」**わからない**。
::引用
<ロナルド>
**自分の能力がコントロールできねぇなんて**あるのかよ?
<ドラルク>
いや珍しい話でもないぞ
::1-8
**変身失敗のようなもの**だから、です。
具体的な**イメージを描けないと失敗してしまう変身**と同じく、妙な状況で「退治人としてどうしたらいいか」に**明確に答えがでないまま生じてしまった**のが「あの夜のロナルド」だから……。
**わからないから、こうなっている節**がある。
わからないんですけど、やるしかない。
撤回できなかったし、それが退治人なので。ロナルドは、退治人でいたいので。
[図]
ということでロナルドはわかっていないでしょうが、たぶんこんな感じです↑
容赦ない割に、実質として優しい部分がチラつくのも、1死と同じく「相手の立場で自分の振る舞いを決める」というシステムがバグってるせいかと思います。
冷蔵庫開けんな!と怒鳴りながら、調整牛乳苦手と聞いて(3死)**特選牛乳を買っておいてしまう**とか(4死)。
ニンニクチューブで攻撃しながら(6死)、退治道具であろう殺鬼剤やニンニクを、**鍵付きのクローゼットや床下収納にしまって隔離してくれる**とか(13死)。
キレて目潰しもするんだけれども、ドラルクが落ちて危なかった洗濯機(23死)を、買い替える時**ドラム式**にするとか……(42死)。
14死で「半田がショック受けないようにファンレターを隠した」のと一緒、退治と無関係の場面で出てくる「ただのロナルド」の振る舞いですね。
「牽制」と同時に、「同居人に対する優しさ」も出てしまっている。
ハナコとかの場合は、**銃を向けながら優しい態度になったりはしません**でした。空砲であることは隠して**脅かすことに徹していた**し、**一区切り判断が出来てから**「優しい態度」に切り替えていましたが……。
ドラルクに対しては**その辺の切り替えが明確ではありません**。ハッタリの裏側で**「気付こうと思えば気付けるレベル」の優しさ**が同時に発揮されるわけです。
1死でゲーム機を奪うようなことを言っていた割に、破損したqsqは5死以前の幕間でちゃんと弁償した様子なのも、その辺でしょうかね。これは優しいというよりは自分の非を補填した感じですが。
相反する行動でも……どうしようもない。同時にやる。
ロナルドは「牽制」を真面目にこなす過程で、「退治人として」「同居人として」……2つの立場をどっちもこなすことになっていたんです。
それを続けていくうちに、……結局癖として染み付いてしまった、と。
ロナルドの「当たりの強さ」は2死から始まったわけではないけど。
**最初は、ドラルクだからやったことではない**けど。
相手が**ドラルクだったから、予定が狂って、2死以降も延長されて**しまって、ずっと止められないでいて……。
もう警戒なんかしていないのに、**コミュニケーションの形だけ残った**。
**失敗した変身が、変に固着してしまったかのように**です。
**「ドラルクに対しては意地っぱり」の正体って、これのことじゃないか**と思うんですよね。
ロナルドは本来、意地を張りにくい精神構造をしています。
図解にも描きましたが、「ロナルド自身の感情」は「退治人としての習慣」よりも優先度が低い。
無理しているというよりは、「退治人でありたい」という自分の気持ちが最優先だからです。
強すぎる一つの想いによって、「退治人としての自分」を優先するようになっている。
自分の些細な感情が出にくくなっている。
これは退治人になる以前からも似たような構造があって……。
::引用
【ロナルド】
小学校の音楽の時間、カスタネットで隣のやつの腹を挟んだらそれがクラス中に大流行、結果音楽の先生が職員室に帰ってしまったのがトラウマ。
::22-266柱
自分のちょっとした好奇心、些細な感情が、結果的に誰かの思いや行動を台無しにしたかと思うと、とてつもなくショックを受ける所があるんです。
**自分勝手にしすぎると返って自分で傷つく**。だから、「他者に影響のある場面」では「自分の意地」が出てきづらいのでしょう。
兄にも逆らう「意地」が本来彼にはあるけど、それは滅多に表に出てこない。
だから、**「延々なんとなく意地っぱり」なんてコミュニケーションは、自然と生じようがない**んです。
発端が「退治人としての一時的な振る舞い」だったからこそ、**「普通はしないコミュニケーション」から始まって**、ドラルクだったからそれが**通じなくて**、通じなかったから**パニックが起きて、撤回する機会を失って**。
変身失敗したように、「狂ったコミュニケーション」が定着して。
**そんな特殊な事情がなければ、生じようがない**。
**悪いと思ったら謝っちゃう**んです、ロナルドは。
314死ロナルド家出回とかまさにそういう感じですよね、ドラルク以外に対してはめちゃめちゃすぐ謝ってたじゃないですか。
そこで自分の感情だけ……**自分の「なんかムカつく」だけを根拠にした意地を**はれるのって、彼としては**状態異常**って気がします。
「退治人の意図」に乗せて、「ただのロナルド」をぶつけるって形式自体は、元々彼の中にあった形なんですけど……それがまさか延々続いて、「普通」になるなんて、まさか思わない。異常事態ですよ。でもこうなっちゃった。
こんなんなっちゃった。
やっぱり**「狂わされた」としか言いようがない**気がします。
だから**「ドラルクに対しては」と特筆して書かれる**のでしょう。
ただ「突然、家に入ってきた」だけでは、こうはならなかった。ドラルクだったから。ドラルクに対してだから。
@回答まとめ
えー、マロ本文の質問部分を改めて見ます。
::引用
1話のロナルドくんほんとに対吸血鬼への倫理観バグってないか…?と思い、もし気が向きましたらざらめさんはその辺りどうお考えでしょうか、聞いてみたいです
::
「1話(1死)のロナルドについて」という話題でしたが……私としては、マロ文に含まれていた
「**1死でロナルドが理不尽だったこと**」
「**ドラルクに対しては意地っぱりなこと**」
「**容赦のない一方で優しさがあること**」
この**3つは全て繋がった連鎖的なもの**と考えているので、一気に全部説明してみました。
ポイントをまとめておくと以下です。
・**3死は「1死でロナルドがやりたかったこと」の投影**として読める
↓
・ロナルドは**敢えて**「通報されかねないが、牽制とされる範囲」の中で**相手の反応を見ていた**
・ロナルドの意図は「文化と価値観」が違いすぎる**ドラルクには全く通じず、失敗**した
・**ドラルクの「退治する気が消え失せる振る舞い」**に当てられて、ロナルド側の判断能力も**混乱**
・予定していた対処ができなくなった**ロナルドが混乱の末「今までにない対応」を生み出す**
・1死でドラルクが死んで**終わった、と思いきや、2死に続く**
↓
・結局「牽制」も「ハッタリ」も**撤回できぬまま、同居に突入**
・「同居人」となったため**自然と「気遣い」の対象**に
・しかし**1死の言動**があるため「退治人ロナルド」としては**警戒を解くわけにはいかない**
・最初のハッタリと混乱が延長、**基本的に当たりが強くなる**
・ドラルクが**弱すぎる**
・そのうち警戒心もなくなって**形骸化**する
↓
・形骸化した「強気で接する癖」が「意地っぱり」の正体?
こうですかね!
だから私の考えとしては「対吸血鬼への倫理観」というより、最初はちゃんと**意図があった「敢えて」のもの**が、ドラルクに対してだけ狂ってこじれたんだろうな、って感じです。
ドラルクに無闇に厳しい一方でハナコへの対応は寛容でしたしね。
半田(ダンピール)との友人関係もありますし、**「吸血鬼に対して」より「ドラルクに対して」**の方が理屈として私は納得しやすかったです。
ちなみに、初期から**ロナルドの過激さが和らいだ原因**。色々はあると思うのですが、
ひとつには**同居人としての情が強くなってきたことの表れ**なのかなー、と想像しています。
習慣として、癖のように当然に発揮していた**「優しさ」に具体的な動機ができてきた**というか……。
それと同時に、**「当たりの強さ」の動機はどんどん薄れていく自覚**があって、抑え目になったのかな?と。
なので、**「同居を続けたい」って気持ちに自覚が出てくるイベント**とかは、かなり「キッカケ」として強いんじゃないかと感じます。もちろんグッマザとかもそうです。
## ドラルクはどうなの?
はい。
ここまでつらつらと「**ロナルドは最初意図があった**」って話をしてきてるんですが、こうなるとやっぱ**ドラルク側の心理**も気になって気になって考えたくなる……。
ので、書いたのですが。
でもこの記事の主題って「**ロナルドの思考どうなっとんねん**」ってことですし。
そもそもこの時点で**話を広げ過ぎてこの記事がウルトラ難産になってしまった**ので、
この話は一旦一区切りとします!!
マロ主さんにこの記事が届くかわかりませんが、多少なりと考えを進める助けになれば幸いです。
終わ……
……
……らないでよ!!
**なんでよ!!もっとくれよ!!**
な方は(いるのか?)(いてくれ)(いらっしゃいませ)
**noteに続き**を書いたので、そちらへどうぞ。
**ドラルク視点の解釈**とか、双方の考えを解釈した上で**1死を「吸死の始まり」としてどう見るのか**、とか。
そのあたり興味ある方は、ぜひ。
では今度こそ、おわり!!完(ヌン)!!